今回、取材班が向かったのは、静岡県藤枝市。今話題の“あるツアー”が行われるといいます。
参加者は、首都圏に住む人たち。その目的は“移住”です。
静岡県は、ある調査で「移住希望先ランキング」3年連続1位と、移住先として注目されています。
そこで、「空き家再生」と「移住促進」。地方都市ならではの新たな取り組みを追跡しました。
■行政×業者連携「すべてがWinWin」
少子化や人口流出などによって、全国で増え続けている空き家。静岡県でも、およそ28万戸、総住宅数に占める割合は、およそ16%と過去最高になっています。
その空き家を有効利用し、移住者を増やす。そうした新たな取り組みが始まっています。
この日、藤枝市が企画したのは移住体験ツアー。参加した5組9人すべてが、首都圏からの移住希望者です。
静岡県は、首都圏からのアクセスが良く、気候も温暖で自然も豊か。「ほどよく、都会ほどよく田舎」が人気の理由だといいます。
移住ツアー参加者:「自然が多くて、暖かそうな所に住んでみたくて」「静岡は雪が降らなくて、暖かくて住みやすいと聞いて」
見学するのは、駅周辺の公園やスーパー、地元の農産物が安く買える直売所などです。
移住ツアー参加者:「ミカン買いました。安い、おいしそうだし」
そして、ツアーの最後は、移住に重要な住まいを見学。空き家のリノベーション物件です。土地108坪、築45年、2階建ての5LDK。
移住ツアー参加者:「めっちゃ広いですね」
2面採光で明るい18畳のリビング・ダイニングですが、実はリノベーションする前は、フロア続きではなく仕切りがあり、キッチンも窓側にありました。
1階には、他に6畳の和室があります。気になる浴室は…。
移住ツアー参加者:「最新ですね。十分な広さで」
他にも、キッチンなど水回りはすべて新しい設備で、販売価格は2098万円。周辺の新築価格のおよそ半額で購入できるといいます。
市は空き家への移住に対し、補助金を最大170万円出しています。
さらに、見学ツアーなども企画。これにより、業者も積極的に空き家再生が行え、移住者が空き家を購入、空き家は減り、業者にも利益、市も税収増になります。
藤枝市 住まい戦略課 空き家対策 係長・小林亮介さん:「すべてがWinWinの関係。移住の大きな流れを民間事業者と連携して、さらに進めていきたい」
藤枝市ではツアーを始めた3年間で、278人が移住しました。
静岡県内のこうした自治体と連携し、空き家対策に取り組んでいるのが、静岡県内の空き家を300軒以上買い取ってきた空き家専門の不動産業者、その名も「空き家買取専科」です。
今回、その買い取り現場に密着しました。
■築32年“買い取り査定”現場密着
物件は、静岡市内にある土地42坪、建物は築32年、2階建ての4DK。まずは、リフォーム業者と買い取り業者が、家の状態を細かくチェックします。
買い取り業者と連携するリフォーム業者:「雨漏りはないですか?一度もなかったですか」
床下など家の基礎はもちろん、シロアリの状態合わせて確認します。
リフォーム業者:「状態はすごく良い」
基礎部分に関しては高評価。しかし、キッチンに問題がありました。
リフォーム業者:「(キッチンが)暗いので、それを補う照明を足す」
続いては、お風呂。「大規模な改修が必要」だといいます。ただ、家の趣はあえて残すことになりそうです。
リフォーム業者:「柱とか、筋交の木は残ってくるので。和風な感じの家づくりになってくる」
依頼人:「ガラッと変わるのかと思ったけど、それはそれでいい」
この空き家の所有者は、伊藤訓子さん(62)。家族の思い出が詰まった家ですが、住んでいた母親が去年他界し、その後、空き家になったといいます。
伊藤さん:「ほんと寂しいですね。帰ってくる所がなくなったような気持ちはあります。それならば、少しでも形を残したまま、誰かに使ってもらったほうがいいのかなと」
そこで「空き家買取専科」に依頼したといいます。
最寄りのJR興津駅から歩いて10分ほどと好立地のこの物件ですが、この業者によると、木造一戸建ての場合、築年数が22年を超えると建物部分の価値は、ほぼなくなってしまうといいます。
リフォーム業者:「(修繕)費用と予算プランのバランスを取ってご提案」
買取価格は明かせないといいますが、その後、商談は成立。建物をリノベーションした後、およそ1500万円で販売される予定だといいます。
「空き家買い取り専科」では、長年培ったノウハウで、数百万円から高い時には1000万円かけて空き家をリノベーションするそうです。
■古民家も…“リノベーション復活”
青い壁と木の玄関が印象的なこの家も、築41年の空き家でした。
和室は欄間(らんま)をそのまま生かし、ふすまの色を変えることで、モダンな雰囲気に。洗面所は、洗濯機の場所を変え現代風に再設計することで見違えるようになりました。
そして、リビングは仕切りを取り払い、フロア続きの明るく広々とした空間になりました。
150坪土地付きで、2198万円。こうした空き家を再生した物件は、地元の住民にも好評だといいます。
同じ藤枝市内に住んでいたカップル。購入したのは180坪の土地に建つ築55年の一戸建てです。
同じ藤枝市から転居:「柱とかはそのまま残しつつ、周りをきれいにして、前の状態を生かして」「壁もそのままで、すごくきれい」
玄関に元々あった梁(はり)や柱、板張りの天井は生かし、壁紙を張り替えてシックな雰囲気に。畳敷の大広間だった部屋は欄間を生かして、趣があり温かみを感じるリビングに。
そして、縁側の天井は生かして、ランドリールームやゲストルームとしても使える部屋にリフォーム。販売価格は、建物と土地合わせておよそ2700万円です。
■30代夫婦…700万円で“一戸建て”
そして、去年5月に東京都内から夫婦で移住してきた宮本直幸さん(38)。築35年の5LDK、125坪の土地付き戸建てで、なんと700万円です。
宮本さん:「ここは、かなりきれい。同じ条件の他の物件は、リフォームをしないといけない。こっちがリビング。こっちはキッチン。結構広さはあると思う」
“昭和に建てられた家”ならではの良さもあるといいます。
宮本さん:「日本家屋ならではの梁があったり、和室の雪見障子とか良い。あと、古いキッチンがレトロポップでかわいい」
どうして静岡に移住を?
宮本さん:「元々は東京で妻と出会って、妻が静岡出身。週末は2人で東京を出てツーリングとかして。東京に行ける距離の静岡なら、移住してもいいかなと」
コロナ禍に移住を決め、宮本さんは転職し、静岡市内で製造の仕事をしています。
1000万円以下という格安物件も決め手になったそうです。
現在も都内で働く妻の有香さん(30)は…。
妻・有香さん:「庭も広くて。何もできてないけど、今後色々やる楽しみ。2人で考えていく楽しみはあるかな」
「空き家再生」と「移住促進」を合わせた取り組み。県外の自治体も興味を示し、他の地方都市にも広がりつつあるといいます。
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